筆者は埼玉県にある小さな個人塾で働いている。従業員の数は1人・・・。そう筆者のみである。毎日午後3時頃に出社して深夜の2時頃に帰宅するという生活だ。帰宅したら弁当屋の弁当をかき込んで風呂入ってnetflix見て気絶。そんな単調な毎日の繰り返しである。それでも何とか精神を維持できたのは週末に会える友人がいたからだ。
世界はコロナ、コロナと騒がしく約1年半ほど自粛が続いた。1年半・・・。筆者は当塾生以外とまともに会話をすることなく先述の生活を淡々と繰り返した。
そんな中、ある事件が9月に起こった。結婚詐欺である。ギリギリで回避したけれど心に負った傷は半端ない。
「俺ってもうそんな年なの?」
「結婚詐欺に引っ掛かる奴なんてあほだと思っていたけど・・・ごめんなさい!!」
「おい!!もう限界だ!!限界だよ!!」
誰に言うともなく筆者はマンションのリビングで1人ごちた。そして、その指は脳の信号よりも早く結婚サイトを片っ端からクリックし、そして埼玉県仲人協会のページが目に飛び込んできた。夏の暑さも和らぐ9月の終りのことであった。
この仲人協会の値段やシステムなどに関することは仲人協会のホームページに正しい情報が掲載されているのでわざわざ細かくここには書かないが、筆者が仲人協会を選んだ理由は2つ。1つは、当然安いからである。成婚したら23万円くらいの金を協会に払うだけで、月々の支払いも6千円くらいですむのは他の結婚相談所に比べてとてつもなく安い。2つめは、その登録者数の多さに惹かれたからだ。
しかし、不安は残った。どれくらいの期間にどれくらいの人を紹介してもらえるのかが不明だったからだ。仲人協会のシステムだと女性が最初に男性のプロフィールを見て、女性がOKを出したところでお見合いが始まる。その逆は無い。ネット上をあちらこちらと覗きまくるが、嘘くさい口コミのオンパレードで、情報リテラシーのない筆者はその真偽を見抜くことができなかった。
心に深い傷を負ってリビングで叫ぶような人間に様子を見るという選択肢はない。上手くいくかどうかは分からないけれどじっとしていたら気がおかしくなりそうだ。その悲痛な心の叫びに背中を押され大宮へ向かった。
遅刻をしたらカウンセラーの人に悪い印象を与えてしまう、そう考え当日は約束より30分も早く大宮に着きドトールで時間を潰していた。
初日は、書類をいくつか書いて簡単な説明とパンフレットをもらい帰宅する。何かのキャンペーン中だったらしく入会金と最初の2ヶ月間を無料にしてもらった。ってか、この手のものっていつもキャンペーン中のような気がするのは筆者だけか?(一応、そこらへんのことを確認すると30000円くらいお得になると思う)
しかし、しかしだ・・・。カウンセラーの方から「一緒に良い縁を見つけましょうね!(ガッツポーズ)」と言われた初日の入会手続きから1ヶ月ほど何の音沙汰も無かった。あぁ、そりゃそんなに簡単にはいかないよな。
ところが、そんなある日数年ぶりに町田さん(仮名)という女性から連絡がきた。町田さんは筆者と同じ年で、前の職場でとても仲が良かったのだが、向こうの結婚を機会にお互い距離を置くようになっていた。
「旦那が浮気をした、近々離婚すると思う」・・・・。それをわざわざ筆者に伝える意図は何?上手く利用されているような気もしたけれどそんなこと正直どうでもよかった。私たちは2週間後の土曜日に吉祥寺で飲むことになった。
しかし、しかしだ・・・。次の日、仲人協会から「お見合い相手が見つかりました」の連絡が入る。これは、ドッキリか何かか?仲人協会と町田さんは繋がっているのか?筆者はお見合いを受けるかどうか悩んだ。悩んだが、町田さんと付き合うことが決まった訳でもない。多分、ほとんどの男性がそうするとは思うが筆者はそのお見合いを受けることにした。日時?そりゃ2週間後の土曜日さ。ダブルヘッダー決定。今思えば本当にグルだったのかもしれないと思えるほどの一致率。
2週間後の土曜日、男性側は約1万円(女性は無料)のお見合い料を事前に払い大宮の事務所に向かう。人生初のお見合いである。緊張した面持ちで初対面を迎える。仲人が相手のプロフィールとこちら側のプロフィールを読み上げる。いやいや、向こうはこっちのプロフィールを全部知ってるんじゃないのかい!と少し心の中で突っ込みを入れながら50分間のフリータイムを待つ。
相手は北海道大学の大学院を卒業したインテリ公務員であった。
「北海道大学だなんて優秀な方なんですね」
「そんなことないです」
「ケイテキ寮って有名ですよね。昔何かのドキュメンタリーで完全に学生が自治を行っている最古の学生寮として紹介されていましたよ」
「よくそんなこと知っていますね。私は普通にアパートを借りていたので詳しいことは分かりませんが、あそこに住んでいる人たちは独特でしたね」
筆者は必死で頭をフル回転させて話を繋いだ。しかし、あまり相手の女性が乗り気でないことは口数のすくなさから明らかだった。
50分のフリートークが終了し、仲人と一緒に女性が退席をした。戻ってきた仲人と少し会話をする。
「とても和やかに話をされていて安心しました。もし相手の方がOKでしたら次のステップに進みますか?」
「もちろんです。もっと色々話をしたいです」
「わかりました。ただ、相手の方が一度話を持ち帰りたいとのことでしたので、連絡が入り次第メールでお伝え致しますね」
「・・・・あ、よろしくお願いします」
いやいやいやいやいやいや、無理でしょ!!一度持ち帰られた案件に逆転ホームランはないでしょ!!
まぁ、そんなに簡単にはいかないさ。・・・
家に帰り、新調したリーガルの靴を脱ぎ、少しゆっくりしたところで服を着替えてダブルヘッダーに向かった。
試合中、ズボンの左ポケットに微かな振動を確認する。町田さんがトイレに立つ間に素早く確認。「今回はご縁が無かったということで」の文言。本当にこういう断り方するんだなと変に感心した。
町田さんとはどうなったのかって?どうやら町田さんはlineの整理をしていただけだったみたい。もう連絡しないなっていう人に片っ端から連絡をして連絡が返ってこなかったら連絡先を消すつもりだったみたい。筆者の返信が1番速かったらしい・・・泣
「金なら1枚、銀なら5枚でおもちゃのカンヅメがもらえるんだ。だけど銀のエンゼルがでるたびに大事にとっておいたはずの1枚を失くしちゃってて悔しい思いをしてたんだ。金のエンゼルが出た事はないよ。おもちゃのカンヅメももらえなかった。でもそんなのは子どもの頃の話さ」よしもとよしとも『青い車 / 銀のエンゼル』より
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何故か上記のセリフが頭をよぎり帰宅後本棚をあさった。
それから埼玉県仲人協会からは1つも連絡が来ていない。
まとめ
筆者のスペック
38歳・170㎝・65㎏・年収は平均年収を若干下回る・マンションのローンは完済・相手は自分の年齢よりも下なら何歳でも・相手の結婚歴および職歴は気にしない
これで4カ月待ち1件のお見合いが成立
これがリアルです。もちろん本人のスペックによって全然違ってきますが、参考にしてみて下さい。
今日はここまで!!
またね!!